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Top > JOBS & STUDY > エンタメ業界のお仕事 > 第5回:ギタークラフト篇

音楽・芸能といったエンターテインメント業界で働く人たちに、 本音で自身の仕事について語ってもらおうというのが、当企画。 第5回目は、ギタークラフト篇。 インタビューに応じてくれたのは、瀧田夏輝さん。 ギター製作に関わる仕事に興味を持っている方は必見です!

イメージでしかわからなかったデザインが、実際に色を塗っていて、どんどんギターらしくなっていく。その変化を目の当たりにできるのが、魅力的ですね。

――ギター製作の仕事をしようと思ったきっかけについて教えてください。
瀧田:小さいころからモノづくりが好きで、工場で働きたいなと思っていました。加えて中学生のときに、バンドが流行っていたのもあって、音楽の道にも進んでみたいなと。高校生になって、音楽とモノづくりのふたつが合わさった仕事ができたらと、進学先を探していたら、ギター製造をしている会社の系列である学校、ESP学園を見つけました。そこで勉強して、ギターを作る仕事に就けたらなっていうのがきっかけですね。
――ご自身はギターを弾くのですか?
瀧田:いや、まったくですね(笑)。
――作っていて、自分でも弾いてみたいとは?
瀧田:いや、仕事で毎日触っているので、反動で弾かなくなってしまいました(笑)。
――では、ギターを造るときに心がけていることはありますか?
瀧田:1本の値段が高いので、丁寧にしっかりとやることですかね。
――造る過程で大事、もしくは一番集中するのはどの部分ですか?
瀧田:どれも集中しないといけないんですが、アーティスト用のモデルを作るとなると、ちょっとの失敗で一からやり直しってことになるので、特に集中しますね。
―ー工程ごとに、作業する人は変わるのですか?
瀧田:みんなバラバラですね。うちの工場は、木工と塗装、組み込みの3つに分かれていて、さらにそこから作業ごとに細分化されています。
――ちなみに瀧田さんはどの工程を?
瀧田:今は塗装ですね。中磨きと水研(すいけん)、仕上げの3つを担当しています。
――なるほど。塗装の魅力がありましたら、教えていただきたいです。
瀧田:木工段階だと、イメージでしかわからなかったデザインが、実際に色を塗っていて、どんどんギターらしくなっていく。その変化を目の当たりに出来るのが、魅力ですね。
――デザインは、決まっているものが多いんですか?
瀧田:そうですね。決まった商品に使われている色があって、それがどんどん流れてくるので、同じものが多いです。ただ、販売店からオーダーメイドの発注もあって、普段とは違うデザインをすることもあります。
――1日にどのくらいのギターを塗装するのですか?
瀧田:仕上げだけだと6、7本。自分がやっている他の工程をあわせると、18本とかになりますね。
――ちなみに塗装だけで、ギター1本に対してどのくらい時間がかかるんですか?
瀧田:塗装の種類にもよるんですが、早いものだと2、3週間で出来上がったりします。絵が描かれているような、いわゆるグラフィカルなギターは、3ヶ月かかったりしますね。
――――な、長い……。作るのに難しいギターの種類はありますか?
瀧田:変形しているもの、ESPの機種でいえば、FRXシリーズや、-STREAM-といった、複雑な形状のものは大変ですね。
――ちなみに今までに、これは無茶だろ!?と思ったギターってありますか?
瀧田:基本、オーダーメイドは作るのが大変なものが多いんですよ。なので、特にこれっていう印象はないんですが……。あっ、形はシンプルだったんですが、スクール水着の形をしたギターは驚きました(笑)。
――……え? スクール水着!?
瀧田:全体を紺色に塗って、しっかり名札の部分まで再現するという(笑)。
――なるほど(笑)。話は変わるのですが、尊敬している職人さんはいますか?
瀧田:今、自分に教えてくれている先輩ですね。ひと通りの仕事をこなしていて、その姿を見て、すごいなと。その人から、日々たくさんの技術を吸収しています。
――では、働いていて一番嬉しかったことがあれば教えてください。
瀧田:仕上げの段階で、バフ掛けという表面をピカピカにする工程のなかで、ラッカー塗装という、ちょっとでもミスすると傷になる、けっこう大変な作業があるんですが、初めてその工程をやったギターを見せたときに、「完璧じゃん!」と誉められたことが、一番嬉しかったです。
――では、逆に失敗談はありますか?
瀧田:あとは磨いたら終わり! というところで、ギターを勢いよく落としてしまって。もう作り直しになるレベルの損傷だったんですよ。木工のほうに謝りにいったときに、めちゃくちゃ怒られたことですかね。
――うわあ……。やはりトラブルがあって作り直す、なんてことはあるんですね。
瀧田:ありますね。ギターのボディを組むのに、2枚の木を貼っているんですが、乾燥させているときに、木が縮んではがれてしまうこともあります。そうなるとやり直しになります。
――やはり木の種類で、扱い方も変わってくるんですか?
瀧田:そうですね。この種類は乾燥しやすいから気をつけろ、みたいな。

人によってギターが重ければ良い音が鳴るとか、軽いほうが生音が良いみたいなことがあります。

――ギターが故障してしまった場合、持ち主でも修理できる部分はあったりしますか?
瀧田:パーツが壊れたりしたら基本的にネジで留っているので新しいパーツを買えば簡単に付けられる物もあります。
――ギターのメンテナンスで特にやっておいてほしいこと、気をつけてほしいことは、ありますか?
瀧田:基本的にロックン・ロールの人たちは振り回したりするので、ボコボコになるので、特に気をつけて欲しいことはないですね。
――ボディ段階と配線段階で意識していることはありますか?
瀧田:見た目をきれいに見せるのを意識しています。
――ボディにペイントしてあるギターと木目が見えている、あまり塗装していないギターでは寿命は変わるんですか?
瀧田:特には変わらないです。
――ボディーの形によって音の大きな変化などはあるんですか?
瀧田:そうですね。木材の使う量が違うので。
――主にどんな違いが?
瀧田:人によってギターが重ければいい音が鳴るとか、軽いほうが生音がいいみたいなことがあります。
――個人でそれぞれ感じ方が違うんですね。
瀧田:完全に個人の好みですね。
――ESPのギターで優れている部分は何ですか?
瀧田:形ですかね。
――いろいろな形がありますもんね。瀧田さんがESP以外で良いと思うメーカーはありますか?
瀧田:そうですね。やっぱりフェンダーとかですね(笑)
――ESPの楽器の種類でエドワーズというのがあると思うんですが、ESPの楽器との大きな違いは何ですか?
瀧田:作っている人たちの気合ですかね(笑)
――気合というと?(笑)
瀧田:ESPとエドワーズの楽器では値段が大きく違うのでESPの製品と比べると、これぐらいだったら製品として出せるなということですね。
――機材(アンプやエフェクターなど)は同じメーカーで揃えるのが良いんですか?
瀧田:バラバラのほうが良いと思います。プレイヤーによっても、さまざまなこだわりがあると思うので、自分の好きな音になるように、いろんなメーカーを使うと良いと思います。
――ここ(ESP新東京第一工場)ではどのラインの製品を作っているんですか。
瀧田:ESP、E-U、EDWARDSを作っています。
――他の工場(ESP新東京第二工場)では?
瀧田:ほとんどESPの製品だけです。
――今まで作った中で一番大変だなと思ったモデルは何ですか?
瀧田:一般的に売っているレギュラー・モデルでは、ストリームという段差のあるギターがあるんですけど、段差の部分も光らせたりしないといけないので、けっこう大変ですね。
――オーダーメイドでも大変だったモデルはありますか?
瀧田:オーダーメイドに関しては基本的に全部大変です。
――オーダーメイドは一つのギターでいくらぐらいするんですか?
瀧田:オーダーメイドはピンきりですね。
――瀧田さんが見た中で今までで一番高いのは?
瀧田:200万円くらいですかね。
――ちなみにTHE ALFEEの高見沢さんのギターはいくらぐらいなんですか?
瀧田:最新モデルで650万円です(笑)
――とても高いですね(笑)それもこの工場で作ったんですか?
瀧田:そうです。
――ESPミュージカルアカデミーのクラフトコースでは、すべての工程を学ぶと思うのですが、元から塗装を仕事にしたかったんですか? それとも、工場に入ってから塗装に決まったんですか?
瀧田:最初に工場に受かったときに希望を聞かれて、木工と答えたんですけど、その年にたくさん人を採用したらしく、みんなが木工を希望していたため、“こいつの顔は木工じゃないな”みたいな感じになって、塗装の担当になりました(笑)。
――ちなみに学生時代、塗装は得意だったんですか?
瀧田:いいえ(笑)。学生のころは塗装がけっこう苦手で、先生にやってもらったりしていたんですけど、いざそれが仕事になると、やばいなと思って、先輩などに聞いてメモを取って一生懸命勉強していました。
――逆に一番好きだった工程はなんですか?
瀧田:組み込みという工程です。パーツがついてやっとギターが完成する、最後の工程です。学生のときは3ヵ月〜半年に1本作るので、最後の工程でいいギターになるというか、けっこういいものが作れたと思います。

本当にギターが好きだなって思う人が向いているんじゃないかなと思います。

――学生時代についてや、プライベートについてお聞きします。ESPミュージカルアカデミーでは、どういったことを学んだんですか?
瀧田:ギタークラフト科だったので、ギターを作ることがメインだったんですけど、楽器の音色を変えるエフェクターがあって、それを作るのが好きな先生がいて、その先生に影響されて、2年生のときはギターを作るよりかは、エフェクターを作るのをメインにしていましたね(笑)。どっちかっていうとエフェクターを作るほうが好きかなっていうのはあります。
――自分が学びたいと思っていることを授業で受けることはできたんですか?
瀧田:コースがエフェクターを作るコースだったり、エレキ・ギターを作るコースだったり、アコースティック・ギターを作るコースに分かれていて、2年生になったとき、アコースティック・ギターを作ろうと思って、そのコースにいったんですけど、エレキ・ギターと比べて、ひとつを作るのにけっこう時間がかかるんですよ。それで板と板を貼り付けているときに、エフェクターをちょこちょこ作っていたら、そっちのほうが楽しくなって、ギターを作るのに1年かけて、空いた時間をエフェクター作る時間につぎ込んでいましたね(笑)。
ーーなるほど。
瀧田:自分自身、アコースティックコースというよりは、エフェクターを作っているところなんじゃないかなって感じでした(笑)。
――学生時代に大変だったことってありますか?
瀧田:睡魔と闘うことですかね(笑)。
――午前中が授業だったんですか?
瀧田:午前中授業で、それに加えて新聞奨学生をやっていたので、睡眠時間が1日1時間とかで、座学が本当に地獄で。最悪だったのが、授業中に寝ていたんですけど(笑)、就職活動の電話の受け答えの授業があって、先生にやってみろと言われたんですけど、全部寝ていたせいで、何も聞いていなかったから、わからなくて。「はい、もしもし」って最初に答えちゃって、「もしもしじゃないでしょ!」って怒られました(笑)。盛大にみんなの前でやらかしたことが失敗でしたね。
――ESPミュージカルアカデミーに入ろうと思ったきっかけは何ですか?
瀧田:『耳をすませば』っていう映画があるじゃないですか。あの映画を観て、楽器作っている人みんなモテるんじゃないの!? みたいな(笑)。やりたいこととかぶっているし、めっちゃモテよう!と思って実際に入ったんですけど、全然モテないですね(笑)。
――(笑)。
瀧田:女の子と話すとき、ギター作ってるっていうと少し盛り上がるんですけど、それだけです(笑)。それ以上には発展しないですね(笑)。
――ESPミュージカルアカデミー以外でも気になっていた学校ってありますか?
瀧田:モノを作ることが好きだったので、車を整備するような学校だったりとか、映像を作ったりだとか、造型とかですかね。立体のものを作るような学校は気になっていましたね。
――学生時代に印象に残っていることはありますか?
瀧田:先生と学生の距離が近いことですかね。
――具体的なエピソードはありますか?
瀧田:卒業生が先生になることも多いので、年齢も近いし、学生との距離も近かったですね。
――話は変わりまして、就職活動はどのように行っていましたか?
瀧田:まったくやっていなかったですね。最初ギターを作ろうと思って学校に入ったんですけど、思ったより違うなあと(笑)。一般企業でいいかなと思って就活をしようとしていたときに、この工場の求人が来ていて、練習だと思って書類を出したら、受かって。集団面接だったんですけど、そのときも質問されるのが最後で、いいたいことを全部先に言われちゃって、どうしようと。もう落ちるなと思ったので、世間話をしたんですよ。「ギターどれくらい弾けるの?」って聞かれて、「全然弾けないですけど、ギター抱きしめながら寝てます」とか言っていたら、こいつ面白いと思われたのか、なぜか受かりましたね(笑)。
――そうなんですね(笑)。
瀧田:落ちるというか、受かる気もしていなかったのに、まさかここまで来れるとは思っていなかったので、就活苦労したとか、こういう準備したとかはないですね。
――なるほど……。ここ一社しか受けてないってことですか?
瀧田:そうですね。
――だいたい何月くらいに?
瀧田:受かったのが8月とかですかね。書類を出したのが5月、6月とかですかね。
――受かった勝因はありますか?
瀧田:どうなんだろう。面白い人を取るとか、そんな感じじゃないですかね。話を聞いている限り。本当かどうかはわからないですけどね(笑)。もう辞めてしまった人が言っていたんですけど、「お前は顔がいいから合格した」って言われたらしくて(笑)。そんな理由で!? って驚きました(笑)。たぶん他にもあったとは思うんですけど(笑)。
――(笑)。話は変わりまして、休日は何をしていますか?
瀧田:休日は……。だいたい金曜日に、日付が変わって、4時、5時くらいまでお酒を飲んで、15時、16時まで寝て、パソコンでネット・サーフィンをしたり、本を読んだりして、また寝るぐらいですかね。
――外に出かけることはなく、家にずっといる感じですか?
瀧田:そういう予定を入れたときは飲むのを控えて遊びに行きますけど、特にやることがなければ、お酒を飲んで寝るくらいですかね。
――最近のマイブームって何かありますか?
瀧田:この間バイクを買ったので、バイクでツーリングをしています。
――どの辺まで行きましたか?
瀧田:奥多摩とか。ツーリングのスポットになっていて、バイクで来た人たちがたくさんいるので、そういう人たちと走りやすい場所を情報交換していますね。
――本を読んでいるとおっしゃっていたと思うんですけど、最近読んだものってありますか?
瀧田:本って言ったんですけど、実は漫画で(笑)。見栄を張ったんですけど(笑)、仕事終わりに、電車通勤なので、乗り換えのときに本屋があるんですけど、そこに毎日顔を出していますね。そこで良さそうなものがあったら買っています。まだ読んでいないのに、漫画だけが積み重なっていくっていう(笑)。
――最近読んだ漫画はありますか?
瀧田:映画化された『聲の形』を読みました。
――では最後にこの業界を目指している人たちにメッセージをお願いします。
瀧田:本当にギターが好きだなって思う人に向いている業界だと思います。逆に言えば、何となくやってみたいという気持ちだと、就職してから続かない場合があるので、熱い気持ちを持っている人にぜひ目指してもらいたいですね。

企画、インタビュー&コーディング:ESPミュージカルアカデミー Webクリエイター科学生

番外篇 ESP工場を見学してきた!

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