男女問わず絶大な人気を誇るガールズ・バンドSCANDALのドラマーRINAのスペシャル・セミナーが7月29日、東京・高田馬場のESPミュージカルアカデミー本館B1ホールにて、300人の参加者を集めて行なわれました。
トークあり、質問タイムあり、フレーズ解説あり……間近で演奏をあますところなく観られるプレミアムなセミナーをteenaではテキストにて誌上再現。そして、セミナー終了後のRINAさんにインタビューを敢行!
大阪では過去2回、イベント・スペースを使ってのドラムセミナーを開催したことのあるRINAさんの“小さな夢”が、「ライブハウスのような音響設備のしっかりしたところで生音を届けながら(セミナーを)やってみたい」ということで、今回はそれが叶い、喜ぶRINAさん。
「教えるというとエラそうで申しわけないんですけど、8年間ドラムをやって来て思うこと、これからドラムを始めるみなさんに伝えたいこと、ちょっとした技とかポイントを今日教えられたら、いろんなことに活かせてもらえるんじゃないかなと思って。一緒に頑張りたいと思います」。
開場時に“RINAさんからお客さんに聞きたいこと”をアンケートしたところ、大阪に比べると予想以上に経験者が多く、未経験者と経験者の割合は半々くらいといった状況で、セミナーはスタートしました。
ライブの最中、イン・イヤー・モニターから聴こえてくる実際のクリック音を紹介するという、初の試みからスタート。
「これを耳に付けて、ここから音を聴いて演奏してます。これを使うと会場の環境に左右されずに安定して自分の欲しい音を聴きながら演奏できるから、使ってるんやけど、どんな音が聴こえてるかっていうのは、今までお客さんには聴いてもらったことがないので、今日はその音をみなさんに聴いて欲しいと思い、音を用意してきました。私以外のメンバーも大きな会場でやる時は使ってるんですけど、ドラマーだけが聴こえてる音っていうのがあって。それがクリックっていうテンポを一定に保つための目印というか、リズム・キープのために出ている音。これを使っている楽曲が半分くらいあるんですね。その時の気分で速くなったり遅くなったりとか、音源よりもあえて遅くしたりとか速くしたりとかっていうのもライブの時はあるんですけど、音源と同じスピードで演奏をしたい曲やシーケンスというバンドが演奏している以外の電子音などを出しながら演奏している曲は、クリック音を聴きながら演奏しています。スピーカーから流れる音が、私のイン・イヤー・モニターから聴こえてる音と同じという環境で、今日は耳の中を体験してもらいたいと思います」。
クリック音にはカウベルの音を使っているそうで、「高音と低音をカットして、中音域だけが耳に返ってくるように音を作っていて……。そうすると耳の寿命がすごく延びる。身体って消耗品だから、大事に使っていかないとなって思うし、耳に優しい音を作って、使っていますね」。
ここで、「ビターチョコレート」で使用するクリック音をCDの音に併せて紹介。
「テンポをキープしながら演奏するんやけど、「ビターチョコレート」のように全体的にゆったりした曲の場合は、4分じゃなくて8分でクリックを刻むと、より正確に、ジャストなところでスネアだったりオカズを入れられるんです。ゆっくりの時は、クリックを細かく刻むっていうのが、練習の時もすごくいいと思います」。
RINAさん以外のメンバーはクリック音を聴いているんでしょうか?
「他のメンバーはクリックを聴いてないんですよ。だから、盛り上がって速くなっちゃう時があるんですけど、そこはグッとドラマーが我慢して支えてあげるという(笑)」。
CDとクリック音に合わせて実演。
違うクリック音のパターンとして、「LOVE SURVIVE」のケースを紹介。
「速い曲やブレイク、キメがたくさん出てくる曲は、合図をたくさん入れていて、4分でずっと刻んでいたのを8分に変えたり、1234っていうのを自分の声で入れてたりします。「LOVE SURVIVE」は耳がすごく忙しいです。大きく激しく行くところっていうのは、ギターとかベースの音も歪んですごく激しくなるんやけど、そこをタイトにすることによって、激しく動いてんのに、ものすごくキマっていて、きれいに聴こえるというか。ルーズに行ってもカッコ良く聴こえるところこそ丁寧に落ち着いてっていうのをやると、曲全体が引き締まるので、そういうのがポイントかな」。
CDとクリック音に合わせて実演。
スティック選びは、ドラムを自在に操るためにも重要な作業になります。
まずは材質の話から。材質は大きく分けて“ヒッコリー”“メイプル”“オーク”に分けられるようで、
・ヒッコリー:ポピュラーな材質。適度な固さと重さでコントロールしやすい。初心者にお薦め。
・メイプル:しっとりした持ち心地。軽めで金物に行った時に音の鳴りが特殊。ジャズやアコースティックに最適。
・オーク:固くて重いのでパワフルなサウンドでハードな演奏向き。RINAモデルもオークを使用。女性で使っているのをほとんど見たことがない。
とのこと。
ちなみにRINAモデル(Pearl 171A)に関してですが、チップの形が楕円になっており、「少し長さがある分、ハットの音色とかいろいろなパターンが出せます。いろんなニュアンスが出しやすいですね。先の方に錘(おもり)が入っているので、初めて握った時から自然と先が沈む感じの持ち方になるので、きれいなフォームで叩けます。個人的にはグリップ(滑り止め)を巻いているんやけど、巻くと、先の重心と対になって(重さの)バランスが並行になるんです。長時間叩いたりする場合は、グリップを巻いていると、手や腕のダメージも軽減されるのでお薦めです」とのこと。
では、初心者はどんなスティックを買えばいいのでしょうか?
「最初はヒッコリーがお薦めですけど、愛着が沸くものがいいから、RINAスティックお薦めです(笑)。ストレイテナーの(ナカヤマ)シンペイくんも絶賛してました(笑)」。
スティックの置き場所については……
「フロアのサイドにスティック・ケースごと掛けています。ここに10セット以上入れていて、さらにシンバルの左側にも2本入れています。左手が落ちることってあんまりないんですけど、折れたりしたら、それを捨てて、ここ(シンバルの左側)から取るのが一番早いんですね」。
いよいよフレーズ解説に入ります。
ロックのリズムといえば8ビート。
基本の8ビート(ドンパンドンパン)から始めて、そこからニュアンスを加えていくつかのパターンを実演していきます。
<8ビート>
・パターン1:キックも1拍目と3拍目に一発ずつのシンプル・パターン。
・パターン2:キックを1拍目と3、4拍目に入れるパターン。
・パターン3:2と同じパターンだが、ハイハットを上げるパターン。サビ等で使える。
「左足は踵に重心をおいて、爪先は上げてるくらいというか軽く添えてる感じですね」。
・パターン4:スネアを大きく叩く間に小さい装飾音的なもの、ゴーストという小さいオカズを入れるパターン
「最初は難しいと思うんですけど、雰囲気的にはちょっとだけチップをヘッドの中心に押し付けるような感じ。人差し指と親指だけでスティックを支えます。で、チップを(スネアの)センターに落として上げる。そうすると、連打のようになります。叩くというより落とすという感じですね。小さい音だけど、お洒落でスケール感が出る8ビートが叩けるようになりますね」。
「8ビートだけで1曲叩けるというか、Aメロ、Bメロ、サビ、Dメロで、それぞれ変化をつけることで、違いを出すことができるんです。使い分けをすると、立体感のある演奏ができるようになりますよ」。
<アタマ打ち>
「ポップな曲でよく使われるリズムなんですけど……」
・パターン1:ハットを閉じたままで右手と左手は同じタイミングで叩く。で、その間にキックを入れて上げるだけ。ハットもクローズしている。
・パターン2:ちょっと派手にするには、1のパターンでハットをオープンにする。
・パターン3:ちょっと難しいが、パターン1と2にキックを増やす。
「一定のリズムだったところに、少しハネたようなリズムが入ると、すごく華やかになります。テクニカルに聴こえたり、トリッキーに聴こえたりするのでお薦めですね」。
「8ビートとアタマ打ちを覚えれば、何曲でも叩けるし、ライブで曲と曲をつなげる時にいいですね」。
ドラム・セットやそのスペックに関しては、本人のブログや雑誌等で紹介されていますが、足周りに関しては、あまり言及されていません。
ということで……
昨年のツアーから、ツイン・ペダルになったそうで、「フィルの時とか、ライブ・アレンジで使ったりとか。音源では、まだ使ってないです」。
踏み方に関しては、「ハットに左足を置いている時は、踵を上げています(ヒール・アップ)。それでスタンバイしておくと、ハットが閉じているので、きれいな音が鳴ってくれる。ハットは、爪先の上げる足の乗せ方でいろいろな音が出せるので、繊細な場所ですね」。
「右足はバスドラムに置いていますが、こちらもヒール・アップ。両足とも爪先立ちな感じです。基本、全部ヒール・アップ。爪先のほうがコントロールが効くんです。キックを早く踏みたいのであれば、踵を上げることで解決することが多いですね」。
簡単かつ劇的にバスドラムの音を変えるには、そう、ビーターがポイントになります。
「種類もプラスチックだったり、木だったり、フェルトだったり……私は激しい曲が多いので、強いアタックが欲しくて、プラスチックを使うことが多いですね。さらに強いアタックが欲しい場合は、裏技的なんですけど、5円玉を使います。ビーターが当たるヘッドのほうにガムテープで貼るんですが、ビーターを換えただけでは物足りないということであれば、ぜひ試してみてください」。
ドラム・セットの中でも、最も重要なパーツといえるスネア。材質/音の違いを知れば、何を選べばいいかわかります。
・ウッド:他のスネアに比べて丸めで優しい音。明るい音
・ブラス:何にでも対応可能
・スチール:音量も音圧もある。パワフルな音楽に似合う
「初めて買う人は、ブラスの5インチがいいと思います。好きなジャンルやコピーする曲って、だんだんと幅広くなっていくと思うんですけど、これは何にでも対応してくれるので、長く使えると思います」。
先ほど紹介したフレーズを使い、セミナー参加者とツイン・ドラムで演奏しようということで、希望者を募ります。
使用する楽曲は、ザ・ローリング・ストーンズの「サティスファクション」。
選ばれたのは、ドラム歴2年の女子高生16歳(高校2年)のウメムラカオリさん。
ウメムラさんはアタマ打ちでのリズム・キープ、RINAさんがアドリブ、ということでセッション!
上手かつ順調に推移したので、「もうひとり行きますか」というRINAさんの提案の元、ふたりめの希望者を募ります。
選ばれたのは、SCANDALのファンクラブ会員で、RINAモデルのスティックを使用、SCANDALと対バンするのが夢という、荻窪で活動しているドラム歴3年の高校3年生、ナカハラくん。
今回は、ナカハラくんがアドリブ、RINAさんがアタマ打ちでのリズム・キープという、夢のような展開でセッション!
ふたりには、サインと日付、コメントを入れたRINAモデルのスティックがプレゼントされました。
セミナー最後は、RINAさんのドラム・ソロ。夏休み中の開催ということもあり、タイトルは「夏休み」に決定。約5分にも及ぶテクニカルかつエモーショナル、インプロヴィゼーション性溢れる演奏に、セミナー参加者は大興奮!
そして興奮冷めやらぬまま、記念撮影が行なわれ、セミナーは無事終了しました。